平九郎 我が上の星は見えぬ

 ずっとあいつを見ていたからその視線の先にも気がつく。
 そりゃ俺たちとは付き合いが長ぇから見慣れないモンに興味を持つのもわかるが、よりにもよってあんな頑固で堅物な坊さんはねぇだろ。
 海全に袖にされているところを見て、俺は頼まれてもいないのに勝手にあいつの恋の行方を占った。

「お前さんフラれるって占いに出てるぜ」

 最近少し会話が減ったので、どうにかして接点を持つために占いの結果を告げると、苛立ちの籠った瞳で睨まれる。
 そんな眉をしかめた怒り顔すら可愛く見えちまって、俺も重症だなと笑いが込み上げた。

「気にすんなよぉ!」

 俺の占いは半分しか当たらねぇんだから。悪い結果を言っておけば、どうせ外れるって元気になんだろ。
 でも、勝手に占っておいて気にすんななんていい加減なことを言う俺に腹を立てたあいつは顔を赤くしてぷいっとそっぽを向いてしまった。

 お前の悲しむ顔は見たくない。それなのに、海全と男女の仲にもなって欲しくない。
 自分に自信のない俺はこの燻る想いを伝える勇気がなく、明日も勝手にお前のことを占うんだろう。

2023.11.18